大判例

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東京高等裁判所 昭和43年(ネ)1544号 判決

(2) そこで、後者の請求すなわち、控訴人島村好夫、同加賀良公夫、同加賀良和夫に対する家屋収去、土地明渡しの請求について考察する。

控訴人島村好夫、同加賀良公夫、同加賀良和夫の各勤め先、収入、家族の状況および同人らが本件各土地を買い受け、本件各家屋を建築した経緯(控訴人ら主張の一、二の事実)が、控訴人ら主張のとおりであることは、≪証拠≫により、これを認めることができる。すなわち、控訴人ら(ただし加賀良和夫を除く。)は、本件家屋を生活の本拠としているものであるから、これを収去されることになれば、その生活を根底からくつがえされることとなる。

しかし、当裁判所は、控訴人らが右のような結果に陥ることは同人らみずからにも予期できなかったわけではなく、その他の事情を考慮しても、被控訴人の本請求をもって権利濫用とはいいえないものと考える。その理由は次のとおりである。

(イ) 被控訴人は、控訴人らに対し家屋建築をみあわせるよう再三の警告をしたものであること

≪証拠≫によると、控訴人らは、いずれも本件土地を買い受けた直後に、本件土地にその整地のため赴いたものであるが、これを見た被控訴人は、直接控訴人らに対して、本件各土地は登記名義こそ細野森永となってはいるが、自分の所有である所以(引用にかかる原判決理由記載の事実)を説明して整地を中止するよう要請し、その後も、あるいはブルトーザーの前に座り込んで整地を阻止し、あるいは建築工事を始めた大工に対して工事を中止するよう要請するなどして、再三にわたり工事を中止させようと努めたことを認めうるのである。

したがって、控訴人らにおいて被控訴人の言うことに耳を傾けてその真否を調査する等の方法をとっていたならば本件家屋の建築をみあわせる等して、その損害の発生を未然に防止できたであろうことが考えられる。

(ロ) 被控訴人が、本件各土地の登記簿上の所有名義が細野森永となっていることについてこれを是正すべき裁判上の措置をただちにとらなかったことをもって、必ずしも怠慢とはいえないこと

控訴人らは、被控訴人が細野森永から申し立てられた遺産分割審判事件において、本件各土地を細野森永の単独所有とする旨の審判がなされたにもかかわらず、これに対して即時抗告をすることなく確定せしめ、また、右確定審判にもとづいて細野森永のために所有権保存登記がなされたにもかかわらず、これに対してすみやかに仮処分等の裁判上の措置をとらなかったことが、控訴人らの損害発生の一因をなすものであると主張する。

控訴人らが、遺産分割審判にもとづいてなされた細野森永の所有権保存登記に信頼を寄せたであろうこと、したがって右登記記載と異なる被控訴人の言に耳を傾ける気持にならなかったであろうことは肯けないでもない。

しかし、審判は、権利関係を終局的に確定する効力を有しないものであることを思うとき、控訴人らの右の態度はいささかかたくなにすぎ、控訴人らが被控訴人の警告にもかかわらず本件家屋の建築を強行したことは軽卒のそしりを免れないものというべきである。

控訴人らが、被控訴人が不真正な登記を是正するため、時期を失することなく裁判上の手段を講じたならば、控訴人らにおいても家屋建築を飜意しうる可能性があったかのように主張することは、自らの非を相手方の責任にすりかえるものであって採用できない。

(ハ) 遺産分割審判事件において、亡細野らんが「相続放棄はしていない」旨虚偽の証言をしたことは、被控訴人の本請求を不当ならしめるものではないこと

控訴人らは、右審判を誤らせたことについて被控訴人の母亡細野らんの偽証があずかって力あるものであるから、同女は控訴人らに対して不法行為者として損害を賠償すべき義務を負うものであるところ、同女の死亡により被控訴人が右債務を相続したものであるから、このような地位にある被控訴人からの本請求は許されるべきではない、と主張するが、仮に、細野らんが偽証し、その結果前記審判を誤らしめることとなったものであるとしても、本件各土地を控訴人らに売却したのは細野森永であって、同人の右売却に細野らんが共謀した事実はこれを認めるに足る証拠はない。したがって、細野らんの偽証と控訴人らの損害との間には因果関係は存在しないものであって、本主張も採用の限りでない。

(位野木 鰍沢 鈴木)

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